「いくらシトリ様であろうと、沙織を連れ去るなら容赦しないよ」


千早様も立ち上がった。

一歩ずつ下がるシトリ様にジリジリと詰め寄る。

そして、緊迫した中――。


「ツルギ!サスガ!」


突然シトリ様が叫んだ。

すると外に控えていたのか、二匹の青い龍が飛び込んできた。

千早様に向かって襲い掛かる二匹とは逆に、床を蹴って表へ飛翔するシトリ様。


「やっ!千早様ー!!」


シトリ様に抱えられた私はみるみる小さくなる屋形を眼下に捉えた。


「沙織ぃー!!!!」


シトリ様のつかわした二匹に阻まれて千早様が追ってこれない。

腕を伸ばしてみたけど虚しくて。


私は人間の姿のシトリ様に抱かれながら、薄暗くなってきた空を移動した。