「ふっ、やはり憎いか。この私が」


「っ……」


千早様は何も言い返さなかった。

黙ったまま、シトリ様をきつく睨みつけるだけ。


「憎いだろうな。それで良い。怒りや憎悪は私にぶつけておれ」


シトリ様はお茶をすすってから、スクッと立ち上がった。


「夕星のことで私を恨みたければ好きなだけ恨め。それは許す。だが、助けた人間に対し責任を果たさずして父同様、死にゆくならば…」


シトリ様が私に近づき、グイと腕を掴んだ。


「この娘とは別れよ」


「きゃ…!」


「沙織!?」


シトリ様に引っ張られ、立ち上がる。

何が起こったのか理解するよりも先に、シトリ様が私を抱きしめた。


「覚悟を決めるまで沙織は私が預かろう」


私をがっちり抱きしめたまま、シトリ様が千早様から距離をとる。