「暴れ龍は危険な存在だ。自我をなくし、破壊衝動のみに意識を委ねる。よって暴れ谷という谷に結界を張って閉じ込めているのだが…」


シトリ様はモグモグとフィナンシェを食べつつ私から視線をそらし、ちらっと千早様を見た。


「覚えているだろう?今、暴れ谷にいる三匹の龍のことを」


「……ああ」


「貴様の父が血を与えていた人間どもだ。救っておいて無責任にも放り出した結果があれよ」


「それはシトリ様にも責任があるだろう!父上を殺したのは貴方だ!しかも肉は食って、骨は毒で溶かしたから死体は残らなかった!父上の血をもらえなかった三人は……龍化するしかなかった…」


千早様は俯いたまま声を荒げた。


「どうして!どうして貴方は父上を食ったんだっ!貴方が父上を殺さなければ、彼らだって暴れ龍になどならなかったのに!!」