さっそく千早様がフィナンシェを一つ掴んでモグモグと食べる。
「どうぞ」
それをジッと見ていたシトリ様に、私はフィナンシェを手渡した。
「頂こう」
パクリ。
一口だった。
結構大きかったんだけどな…。
「ふむ…ちと甘過ぎるが、美味だな。ますます濃い茶が飲みたくなった」
薄いと評価したお茶を物足りなげに飲みつつフィナンシェをもう一つ口に運ぶシトリ様。
どうやらお気に召していただけたようだ。
「……シトリ様はなぜここに来たんだい?憎まれ役の毒龍が、わざわざこちらに来たくはなかったろうに」
千早様の問いに、シトリ様は自嘲めいた溜息を吐き出した。
「憎まれ役か…。だが、私はまだ青龍としての誇りを忘れてはおらん」
「え…?青、龍…?」
シトリ様は毒龍なんじゃ…?



