「“沙織だから”」
「は?」
「沙織だから好きになった。沙織だから愛してる」
凛とした声が響く。
内容は恥ずかしいけど、堂々と言ってくれるのは…嬉しいな。
「ハッ、“人間だから”……ではないのか?」
「違うよ。人間なら誰でもいいわけじゃないんだ」
「ほう……余計に厄介か」
厄介?
どういう意味だろう?
「人間なら誰でも、と言うならまあ、見逃してやったかもしれんが」
シトリ様は千早様の額に扇子をピッと突き付けた。
「一人に執着するのは見過ごせん」
シトリ様の威圧的な眼差し。
千早様はそれを真っ向から見据えた。
「シトリ様にどう言われようと、私の妻は沙織だけだよ」
「許さん。諦めよ」



