「娘、名は?」
睨むような眼差しが私に突き刺さる。
表情は綺麗だけど怖い。
「さ、沙織ですっ」
「ふむ…私はシトリ。貴様に聞きたいことがある」
「はい」
「貴様、どうやって千早をたぶらかした」
「え?」
千早様を、たぶらかす?
どういう意味?
「シトリ様!!私はたぶらかされてなんかいない!むしろ私が沙織をあの手この手で言いくるめて、契りまでこぎ着けたんだよ!」
ち、千早様?
それはちょっと言い過ぎなんじゃ…。
「ほう…契りをな。ならばもう生娘ではないのか」
シトリ様はいかにも悪巧みをしてそうな表情で笑むと、扇子をパチンと閉じた。
「どれどれ」
一度立ち上がってから私の前でしゃがみ込む。
それからシトリ様は扇子の先で私の顎をクイッと上向けた。



