「で、例の娘とはそいつか」
ぴっ!?
いきなり毒龍の鋭い視線が私に注がれた。
「例の娘?何の話かな?」
「貴様が惚れた娘だ」
「ああ、それなら間違いないよ」
千早様が私を守るように抱き寄せる。
「そうか。ならば貴様も共に来るがいい。話がある」
毒龍は懐から扇子を取り出すと、それを開いて口元を隠した。
「話ってなんだい?」
「上で話す。ここでは落ち着けん」
そう言うと、慣れた足取りですたすたと階段を上がっていってしまった。
「……仕方ないね。沙織、おいで」
溜息混じりの吐息を吐き出しながら、私を呼ぶ千早様。
「彼は毒龍だけど、私がいるから大丈夫だよ」
「はい…」
千早様がいるから大丈夫。
とは言え、緊張はする。
私はドキドキしながら千早と一緒に階段を上った。



