「毒龍というと、彼かい?」
「はい。奴です。兄上を出せとうるさくて。何の用なんでしょう?気掛かりなんですが、僕には何も話さないんで困りものですよ」
「わかった。私が行こう。沙織、香織、若月と居間にいるんだよ」
私達にニコッと笑いかけてから千早様が上に向かおうとした、その時。
「遅い。この私を待たせるとは、良い度胸だな」
背の高い人物が階段から悠然と降りてきた。
紫色の髪に、同じく濃い紫が基調の艶やかな着物を身にまとった品格のある男性。
「毒龍…!」
千早様が警戒するように唸った。
この方が、毒龍…?
品がありすぎて貴人にも思えるこの人が?
毒龍ってもっと荒々しいとばかり思ってたのに、私の想像を良い意味で裏切ってくれた。
目の前の方はとても優美だ。



