ザーザーと落ちる滝の音に、夜の静寂が重なる。
川の水面を淡く照らし出す月明かりは、まるで自然のスポットライト。
そんな儚くも美しい一夜の舞台に立っているのは、私と千早様のみ。
「沙織…おいで」
千早様は龍から人の姿に変わると、私を滝へと誘(いざな)った。
横幅が狭く細い滝だから、水しぶきがかかるほど近くまで来てもそれ程怖くない。
川もあまり深くないようで、清んでいるせいもあり底までよく見える。
「でも、なぜここに?屋形へ戻らないと……あんなことになってたし…」
壊れたベランダを思い出していたら、千早様にきつく抱きしめられた。
「今は……戻りたくないんだよ。それよりも、沙織」
「はい?」
「水浴び、しよう」



