やっぱり結婚するってことは、そういうこと込みなんだよね?

何となくわかってはいたけど、ハッキリ言われると尚更自分がお嫁さんなんてありえないと思ってしまう。

だって私、まだ高校生だよ?

結婚には憧れるけど、子作りなんて無理…。

お母さんになれる自信、まるでないもん。

子作りが千早様の重要な御役目の一つなら、私は妻に向かないよ。


「沙織、何も心配ないよ。好き合った暁には、必ず君を妻にするからね」


千早様に優しく抱き寄せられた。


何が「心配ない」のだろうか…。

私には千早様の言葉が砂のように思える。

サラサラと手の平から落ちていく、掴めない――曖昧なもの。


きっと私がそう感じるのは、千早様の心がわからないからだ。

彼の本心がわからない。

私のことを好きになりたいらしいけど、なんで?どうして?

その問いばかりが頭の中をぐるぐると巡る。

ずっと近くにいた朱美ちゃんよりも、私を妻にと選んだ理由は何…?


あなたの本心がわからない。

だから怖い。

素直に妻になんかなれない。


これ以上、好きになるのが、怖い。