「じゃあね、お母さん。お父さん」


私は抱えられた体勢で挨拶をした。

お母さん達から見たら宙ぶらりんで池の上に浮いている状態だ。

かなり無様というか、カッコ悪い別れ方だな…。


「元気でね。またすぐ顔見に来るわよ」


「うん」


「おばあちゃんも、元気でね」


「ええ。まだまだ元気でいるわ」


お母さんが寂しそうに笑う。

お父さんも黙ったまま笑顔をくれた。


「では行こう」


凛とした千早様の声が合図となった。

千早様の身体が足から順に池の中へ吸い込まれていく。


徐々に徐々に下がり――。


彼の腰が沈んだ時点で私とおばあちゃんの下半身が水に呑み込まれた。


このまま通り抜けたら、人間の世界とはお別れ。

行き着く先は龍の世界。


向こうでの新たな生活が、始まるんだ。