龍化を抑えるには、向こうに行ってからも年に一回くらい伊吹様の血を飲まないといけないらしい。
それを知って私はちょっと憂鬱になった。
だって、あの伊吹様から血をもらうんだよ?
怖いよ…!
人間嫌いみたいだし、人を小馬鹿にするの好きそうだし。
イジメてやる宣言してきた相手がよりによって私の唯一の救世主だなんて…。
人生、終わったかも。
「………でも」
昨夜は助けてくれた。
私の意思を尊重して。
伊吹様って、本当は優しいの?
それとも、単なる気まぐれ?
……わからない。
気になるなぁ…。
「沙織?聞いてる?龍神様の準備はどうなの?始められそう?」
急にお母さんに話し掛けられて肩がビクッと上がった。
いけない、いけない。
今はおばあちゃんのことに集中しよう。