「ただ…どの龍の血を飲んでも抑えられるかっていうと、そうではなくてね」


千早様が私から視線を反らした。

苦虫を噛みつぶしたような表情で。


「魂に力の一部を分け与えた龍限定なんだよ。だから沙織の場合は伊吹の血しか受け付けないんだ」


ようするに、私の龍化を抑えられるのは伊吹様だけ。

千早様の血を飲んでもダメなんだね。

納得していると千早様がギュッと抱き着いてきた。


「………悔しいね」


「千早様?」


「目の前で沙織が苦しんでいても、私は何もできないんだよ。悔しい…」


「千早様…」


千早様が思い詰めることないのに…。


「伊吹がうらやましい。沙織を救える唯一の存在のあいつが…」


切なく囁かれた千早様の思い。

返す言葉が見つからず、私はただ、彼の背中に腕を回すことしかできなかった。