「影に入ったんだよ」
「影?」
「ご覧。伊吹がいたところに影があるでしょう?」
よく見ると、確かに伊吹様が立っていたところには木の影が落ちていた。
「私達は影を通って向こうへ移動することもできるんだよ。まあ、正式なルートじゃないけどね。さしずめ、裏道ってところかな」
影を通っての移動か…。
なら昨夜は食堂のテーブルの影から出て行ったのかな?
「それより、沙織。願い事、どうするんだい?叶えてもいいって許可はもらった?」
「あ、はい!もらいました」
「そう。なら今から沙織の家に行くよ。君のおばあさんを治してあげる」
「ありがとうございます!」
嬉しい!
おばあちゃんが、おばあちゃんが治るんだっ!



