え?抱え上げて…?
「やっ!降ろして」
「黙れ。舌を噛むぞ」
私を抱えたまま塒山を疾走する伊吹様。
す、すごい…。
伊吹様、めちゃめちゃ速い!
ビュンビュン景色が通り過ぎて目眩がする…!
「沙織ぃー!!」
後方で千早様が呼んでる。
なかなか追いつけないみたい。
頑張って下さい!そして助けて下さい千早様…!
どんどんスピードを上げて伊吹様は山を駆け上がっていく。
どこに…って、まさかまた塒山神社に向かってるの?
私の予感は的中した。
数秒後、伊吹様は塒山の山頂に到着し、鳥居を越えて池に…。
池が視界に映った瞬間、私はヒヤリとした。
「だ、ダメ!まだダメなのっ」
まだ龍の世界に行くわけにはいかない。
おばあちゃんをおじいちゃんに会わせるまでは、まだ――!



