「んっ…」
下唇をやわやわと彼の唇で食(は)まれたかと思うと、急に舌が差し込まれる。
「ふ…っん!?」
逃げようとしたけど、イスに座っている状況でのしかかられては逃げ場なんてない。
甘く深い、思考が蕩けるようなキス。
千早様よりも…激しい。
舌が絡めとられるたびに身体の芯が疼くような感覚に支配される。
「ふっ…ココアも悪くないな。お前との口づけが甘く感じられた」
唇を解放した直後、伊吹様はそう言って艶っぽく微笑した。
「な…んで…こんな」
なぜ私にキスするのかわからない。
なんで私に構うんだろう。
「ん?何が言いたい。落ち着いてから話せ」
私は上がった息を整えながら言葉を紡いだ。
「い、伊吹様は…なんで私に、構うんですか?」



