ドアノブに手をかけようとしたとたん、目の前のドアがガチャッと開いた。

「へえ、家財道具を一式持って行って見るもんだね」

そう言ってドアから顔を出したのは、
「あーっ!」

昨日の変態細マッチョヤロー!

って言うか、
「あたしの家財道具一式はどこ行った!?」

「えっ、そこ?」

“そこ”って、どこだと言う話である。

「テメーがドロボーの親分か!

家財道具一式がなきゃ生活できんのじゃ、バカアホッ!」

まくし立てるように怒鳴るあたしに、
「俺は親分でもなければドロボーでもないから。

ここで生活するために家財道具を全部持って行ったんだよ、兼松真麻さん」

男が言った。