クスクスと笑っている太に、
「太、何で七緒連れてきたんだよー!

俺、すっげー歌いづらいじゃんかー!」

タケルは嘆くように言った後、マイクを手に持って歌い始めた。

歌が上手だと言うのは事実だし、褒められて悪い気はしないけど…今は何だか素直に喜ぶことができなかった。

――わたしと一緒にいるところを見られたら厄介なだけじゃない?

そう言った針井の言葉が、頭に深く残っていた。

本人に聞きたくても逃げられて、そのうえ追いかけることができなかった。

途方に暮れた俺は、仕方ないから合コンの会場である駅前のカラオケ店に向かったと言う訳である。

「霧ヶ峰くん…だったよね?」

その声に隣に視線を向けると、R高校の制服をきた女子が1人。

ゆるくウェーブのかかった肩までの黒髪と二重のぱっちりした瞳が特徴的だ。

かわいい系だな、こいつは。