「ナナも、さ」

フーゴが思い出したように言ったので、俺は彼に視線を向けた。

「若いんだから、傷つけばいい」

そう言ったフーゴの言葉がよくわからなくて、俺は首を傾げた。

「傷ついて、傷ついて…大人になればいい。

友達とケンカしたり、いろいろな恋をして、いっぱい傷つけばいい。

傷ついて、立ちあがって、また傷ついて、また立ちあがって…人生はそんなことの繰り返しだと思う」

フーゴはそう言って自嘲気味に笑って、
「ロクに傷つくことを経験しなかった僕が言うのも何だと思うけど」
と、またウーロン茶を口に含んだ。

俺はオレンジジュースの缶を弄びながら、空を見あげた。

1度恋に破れたからって、フーゴらを始めとする大人たちは笑うことだろう。

だけどさ…。

初恋は、一生に1回しかできないんだよ。