寧々は驚いたと言うように目を見開いた。

「…おはよう」

すぐに、呟くような小さな声が帰ってきた。

人の波が行き交う激しい中、俺たちはその中で立ち止まっていた。

寧々が逃げなくて、俺はホッとしていた。

「――俺さ…」

「――わたしたち…」

俺と寧々の声は同時だった。

俺たちは驚いたように、お互いの顔を見つめた。

「な、七緒くんからどうぞ」

「いや、寧々だって話があるんだろ?」

「でも、七緒くんの方が早かったし」

「寧々の方が3秒早かった」

我ながら訳がわからないやりとりだ。

これじゃあ、
「全然話が進まないね」

俺の頭の中を読んだと言うように、寧々は笑った。