俺はヘアバンドで涙を拭くと、手の中のベビーリングに視線を落とした。

キレイな赤が、傷ついた俺の心を癒してくれるような気がした。

ルビーは、愛を願う石である。

インドでは“宝石の王”と呼ばれ、“不滅の炎”として讃えられている。

フーゴに視線を向ける。

「フーゴが宝物を手に入れたように、俺も宝物を取り戻す」

「うん」

「…絶対、取り戻す」

手の中のベビーリングを握りしめる。

「ナナ」

フーゴが俺の頭から手を離した。

それから俺の顔を覗き込むように、じっと見つめた。