「七緒くん、おめでとう!」

寧々が嬉しそうに声をあげると、俺に抱きついた。

「おわわっ…!」

抱きつかれたことでバランスを崩しそうになったが、俺は何とか持ちこたえる。

…んー?

何か前にもこんなことあった気がするぞー?

デジャヴか?

マシュマロの甘い香りを鼻で感じながら、俺は寧々を抱きしめた。


「あー…まだ夢見てる感じだなあ」

会場を出ると、岩田さんが呟くように言った。

「これが現実っすよ、岩田さん」

俺は返事をした。

「一生分の運を使い切ったかも知んねーわ、これは」

「そんな大げさな」

嘆くように言った岩田さんに俺たちが笑っていた時だった。

「――寧々?」