「だけどさ、嬉しかったよ。

今の今まで“七緒くん”なんて呼ばれたことなんてなかったし。

みんな、“七緒”とか“ナナ”とかそんなのばっかだったから」

「えっ、わたしが初めてだったの?」

そう聞き返した寧々に、俺はうなずいた。

「七緒くん…」

恥ずかしそうに、寧々は呟くように俺の名前を呼んだ。

「ん」

俺は返事すると、寧々の頭から手を離した。

「七緒くん」

「はい、何でしょうか?」

寧々は口を閉じて、微笑んだ。

呼んだだけ、ってヤツか。

…まあ、いいか。