音楽プレイヤーのスイッチを入れたとたん、爆音のダンスミュージックが流れ出す。

俺が大好きなミュージシャンの大好きな曲だ。

流れる音楽にあわせて、大きく躰を動かす。

流れる音楽にあわせて、大きな声で歌う。

頭の中で花火が弾ける――この瞬間が、1番好きだ。

太に無理やり合コンに参加させられたこと、さっきまでのマーサとメグのやりとりなど、今日1日の嫌なことがふっ飛ぶからだ。

ふっ飛んで、また明日1日も頑張ろうと言う気分になる。

最高の瞬間だ。


俺が音楽の世界に入るきっかけとなったのは、7歳の時。

洋楽が好きな母親の影響だった。

初めて聞いた曲はサラ・ヴォーンの「Lullaby Of Birdland(バードランドの子守唄)」だった。

オペラ歌手のような彼女の美しい声に、幼い頃の俺は雷に打たれたような衝撃を受けたのだった。