何故か流れた沈黙。

「――つい…」

先に沈黙を破ったのは、寧々の方からだった。

「つい、呼んじゃったの…。

つきあい始めてから、心の中でいつも“七緒くん”って呼んでたから…」

寧々は恥ずかしそうに顔を紅くすると、目を伏せた。

「やっぱり、おかしかったよね?

いつも“霧ヶ峰くん”って呼んでたから」

「おかしくなんかねーよ」

俺は言った。

寧々が伏せていた目をあげる。

「まあ、驚いたと言えば驚いたよ?

いきなり“七緒くん”なんて呼ばれたから」

ポンと、俺は寧々の頭のうえに手を置いた。