午後の競技が始まった。

「次は100メートル走です。

100メートル走に出場する生徒は…」

アナウンスが流れた。

「んじゃ、行ってくる」

「頑張れよー」

太に見送られて、俺は入場門へと向かおうとした。

「霧ヶ峰くん」

その途中で聞き覚えのある声に呼ばれて視線を向けると、針井だった。

「何だ?」

そう聞いた俺に針井は恥ずかしそうに目を伏せると、
「頑張ってね」

一言呟くように言うと、その場から早足で去って行った。

「頑張ってね…か」

よくわからないが、その言葉はストンと俺の胸に落ちた。