太はこの次にある台風の目に参加することになっている。

「あー、もうすぐか…」

太は呟くと、首にかけていたタオルとスポーツドリンクを俺の横に置いた。

代わりにそれまでブレスレット代わりにしていた青いハチマキを外すと、頭に巻いた。

「んじゃ、行ってくる」

「はい、行ってらっしゃーい」

太に向かって手を振ると、彼は振り返しながらその場を去った。

「霧ヶ峰くん」

その声に視線を向けると、針井が俺の前に立っていた。

「おう、何だ?」

俺が聞くと、針井は困ったと言うように目を伏せた。

…何となくきた的な感じか?

まあ、ちょうどよかったけど。

「座っていいぞ」

俺はさっきまで太が座っていたところを指差した。

「えっ…」

針井は目をあげ、戸惑っていた。