針井はフッと笑うと、
「うらやましいな、そう言うの」
と、呟くように言った。

「わたし、今の今までそんな人いなかったから」

針井はふうと息を吐くと、たまご焼きをかじった。

「あ、ああ…」

俺は、地雷を踏んでしまったと思った。

針井は、今の今までずっと1人だったのだ。

当然恋人どころか、友達もいなかった。

「…何か、悪かったな。

こんな話をして」

呟くように謝った後、俺は緑茶をすすった。

針井は首を横に振って、
「先にしたのは、わたしの方よ」
と、言った。