メグとマーサの結婚式が終わった俺たちは、式内にあるベンチに座って話をしていた。

「俺としては複雑だけど」

俺――霧ヶ峰七緒(キリガミネナナオ)は呟くように言って、癖っ毛の黒い前髪をかきあげた。

「ナナはマーサが好きだったからね」

フーゴがそう言ったのに対し、
「初恋だから、なおさらな」

俺は息を吐いて空を見あげた。

雲1つない青い空に、天までも2人のことを祝福しているんだと思った。

――ごめん…

俺がマーサに自分の思いを伝えたのは、2月のバレンタインデー間近のことだった。

マーサは目を伏せて、俺に謝罪の言葉を投げた。

――あたし、ナナの気持ちには答えられない

マーサは苦しそうに言って、苦しそうに笑った。