前から人混みを縫うように現れたのは、スーツ姿の2人の男性だった。

「英吾兄さん…。

慎吾兄さん…」

先生は怖いものを見たと言うように、彼らの名前を呟いた。

えっ?

お兄さん?

そう言えば、お兄さんが2人いると聞いたことがあった。

お兄さんたちは先生の前にくると、
「久しぶりだなあ、元気にしてたか?」

楽しそうに先生に話しかけた。

楽しそうに話しかける彼らとは対照的に、
「ええ、元気ですよ」

先生はこれ以上話をしたくない様子だった。

お兄さんたちと折り合いが悪いのかと思ったけど、とてもそんな風には見えない。