私は、立ちすくんでいた。

…何これ、宮殿?

まるでバッキンガム宮殿のような大きなお屋敷に、私は立ちすくむしかなかった。

「芹沢さん?」

先生がどうかしたのかと言うような感じで、私に聞く。

「先生の幼なじみって…一体、何をやってる人なんですか?」

先生と同じ大学教授ではないと言うのは、確かなことだ。

「社長です。

製菓会社の社長さんです」

サラリと当たり前のように言った先生に、
「しゃ、社長…!?」

私は驚きのあまり、バックを落としそうになった。

「芹沢さんは『スギヤマ製菓株式会社』をご存知ですよね?」

「え、ええ…」

日本を代表するお菓子の会社を知らないと言う方が間違っている。