家の中に入ると、紙袋を冷蔵庫に入れた。

今日はカルボナーラがあるから、食べるのは明日…いや、明後日でもいいか。

そんなことを思いながらカバンからスマートフォンを出した。

慶太郎くん宛てのメールを作成すると、本文に『ありがとう』と書いて送信した。

離れて暮らしていても、血の繋がりがない私の心配をしてくれることは嬉しい。

時々ご飯を届けてくれることにも、感謝している。

だけど、
「――私のことなんか、いないように扱ってくれてもいいのに…」

小さな声で呟いた後、自分の手に視線を向けた。

今日、先生の手にさわってしまった。

先生にさわったのは、8月のあの日以来だ。

先生と一線を越えてしまった、あの夜のこと。