そんなことを思ったのは、僕も泣きたいからなのだろうか?

情けないから。

臆病だから。

芹沢さんの指が触れてしまった手に視線を向けた。

たった一瞬の出来事だった。

他の人からして見れば、何でもない出来事のはずだ。

なのに僕らはその出来事に驚いて、戸惑った。

「何がしたかったんだ、僕も彼女も…」

芹沢さんが何を考えているのかわからない。

どうしてお手伝いをするなんて言い出したのだろうか?

僕も僕で何を考えているのかわからない。

一体何が言いたかったのだろうか?

「――もういっそのこと、軽蔑してくれればいいのにな…」

“教え子に手を出した、最低な大学教授”――そんな風に思ってくれた方がずっとマシだ。