8月のあの日から3ヶ月が経った11月。

短い秋が終わり、季節は冬へと進んでいた。

「今日も寒そうだな…」

研究室の窓から木枯らしの音を聞きながら僕は呟いた。

机の方に視線を向けると、たくさんの本に囲まれて一生懸命に論文を書いている芹沢さんの姿があった。

芹沢さんは、あの日の出来事をどう思っているのだろう?

あの日の出来事を、どう思いながら過ごしたのだろう?

そして、僕のことをどう思っているのだろう?

聞きたいことはたくさんある。

言いたいことはたくさんある。

なのに、僕はそれを口に出すことができない。

臆病者だ。

自分が傷つくのが怖いから口に出すことができない、臆病者だ。