あれから、10年。

私は24歳の大学院生になった。

中学2年生の時に立てられた誓いは、1度も破ったことがない。

破ったことがないはずだったのに…。

「――破っちゃった…」

1人暮らしの、誰もいない部屋で呟いた。

8月のあの日、私は先生と一線を越えてしまった。

まるで、“あの人”だ。

“あの人”みたいに、それまで先生との間にあった距離を越えてしまった。

あの日については、先生は何も言わない。

私も、何も言わない。

ううん、本当は言えないのかも知れない。

“お酒の勢いに任せた末の出来事だった”なんて、そう断言できない自分がいるのかも知れない。