萌さんは言いたくないだろうし、何より思い出させるのがかわいそうだ。

それに道を聞かれていただけかも知れないし…いや、もしそうだったとしたらあんな風に揉めないだろう。

もしかしたら、彼は風俗か何かのスカウトで萌さんはそれに巻き込まれそうになって…。

フツーの人だったら何があったか聞いて、話を聞いてあげるのが当たり前なのかも知れない。

だけど…僕はそれができなかった。

できないんじゃなくて、怖いのかも知れない。

萌さんに聞いて、それが僕の考えているものとは違う答えだったら…そう思うと、怖くて聞けないのかも知れない。

――全然、変わっていないのもいいところだ。

萌さんとつきあったら、臆病な性格が少しでも変わるかなって思った。

兄たちや両親とも和解して、萌さんにも思いを伝えて、つきあうことになって…この臆病な性格が、変われるような気がした。