何を言っているのだろうと思った。

僕が間違っても、萌さんの手を離す訳ないのに。

「だから…」

萌さんは僕を見つめると、
「風吾さんも、私の手を離さないでください」

僕の唇が、彼女の唇と重なる。

――初めてだった。

萌さんから、キスをされたのは。

触れるだけのキスだった。

だけど離す時はシールをはがすように、ゆっくりと丁寧に…離れた。

萌さんの目が少しだけ潤んでいたのは、初めて自分からキスをしたと言う恥ずかしさの表れか。

それとも、玉ねぎが目に沁みただけなのか。

僕はキスをする代わりに、萌さんの華奢な躰を抱きしめた。