「あ、大丈夫です。

指をケガしちゃっただけなので…」

萌さんは左手の人差し指の先を口にくわえた。

まな板の方に視線を下ろすと、半分だけみじん切りになった玉ねぎと包丁があった。

「ばんそうこう、まだあったかしら?」

萌さんは呟くように言った後、テレビの下に置いてある救急箱のところへ向かった。

最近から料理を作り始めた萌さんの手つきは、まだなれない。

こうして包丁で指をケガしたり、ヤケドしたりするのはしょっちゅうのことだった。

ケガをしながら作る萌さんの料理は多少焦げていても、野菜に火が通っていなくても、美味しいことには変わりはない。

「えーっと、ばんそうこうは…」

救急箱をガザガサと言わせながら、萌さんはばんそうこうを探している。