萌さんの言う通り、玉ねぎは僕の好きな食べ物だ。

萌さんはフフッと笑って、
「何か、おかしいですね。

つきあってるのに、お互いのことまだ知らないなんて」
と、言った。

この前までは、大学教授と大学院生の関係だった。

それがつい最近、恋人同士へと変化した。

お互いのことをまだ知らなくて、まだなれていない。

「どちらかの定食が運ばれてくるまで、お互いのことを話しますか?」

提案を出した僕に、
「いいですね、それ。

…どちらから話しますか?」

萌さんがこちらをうかがうように言った。

これは、僕から話をした方がいいのかも知れない。

「じゃあ、僕から話をしましょう」