大学教授と教え子なんて、そんな風に表現できなくなっている。

じゃあ、僕らは今どう言う関係なんだ?

そう思って考えたら、嫌でも僕が芹沢さんに抱えている思いに気づかされる。

――芹沢さんのことが好き

それは教え子としてではなく、1人の女性として彼女を思い、恋をしている。

バカだな、僕は。

こんな思いを彼女に抱いたって、迷惑に決まっているじゃないか。

だけど…この思いの消し方を僕は知らない。

今までが今までだったからだ。

傷つくことに怯え、傷つけられることに怯え、幼い頃からずっと人を避けてきた。

友達なら恵がいたし、恋人なんて数えるほどにしか作っていない。

いつの間にか彼女に抱いてしまったこの思いを、僕は気づかなかったことにした。