｢好きなんだね､まだ｣


笑顔を崩さずに､彼は図星ゾーンをばっちり射抜いてくる｡


今は忘れたいのに｡



忘れるためのＷデートのはずなのに｡





彼の目を見ずに頷くと､彼はフーっとながい息をついた｡





｢実はさ､俺もなんだよな｣




｢あ…｣



その言葉に彼の表情を盗み見ると､笑みはどんどん薄らいでいった｡


目の前に迫ったたこ焼きの屋台を見ているようで､もっと遠くを見つめている｡




｢忘れられたら楽なのにって思うほど､忘れられなくなってくんだ｡｣





その彼の瞳を見ていると､切ない気持ちが胸を焼く｡


痛いほどわかるけど､彼と私はやっぱり違う｡




私は何もせずにいじけてるだけ｡

彼は気持ちをぶつけた上で､自分と向き合っている｡




｢変な話してごめんな｡あ､たこ焼きたこ焼き!｣




たこ焼きを受け取るときには､彼は笑顔に戻っていた｡



｢変なんかじゃないよ…｣



｢何か言ったー?｣




祭りのざわめきにかき消されてしまった私の気持ちを受け取ったのか､

私の分のたこ焼きを差し出しながら柔く笑いかけてくれた｡