「由紀、さっさといくよ!」

「ちょ、咲良、うまく歩けない」


10年ぶりぐらいに着る浴衣に草履。カランコロン鳴って歩きにくいけど、なんだかこそばゆい。


「見違えるよ。めっちゃ女っぽくなった。私のメイクがうまいからかしら」


わざとらしくフフフとえくぼを作って笑う咲良なんか、スッピンでも可愛いから余計色っぽい。


色素の薄い天然でウェーブのかかった髪を、ゆるくアップしているのでうなじのあたりがすごくセクシーだ。



それに比べ私は、咲良姉の紺色の大人っぽい浴衣がまったく似合わない。
髪の長さも中途半端だから、アップもできなかったし。

神様って不公平・・・



「なにじろじろ見てんのよ。あ、陽たちもう着いたってさ。急ご」


ただでさえうまく歩けないのに、急ぐとなるとすぐに息が上がる。



それに加えて期待と不安で心臓が無駄にドキドキしてるから、着いたときにはもうへろへろだった。



「よッ!咲良・・・むっちゃ可愛いやん・・・」


川瀬君は咲良をポーッと見つめている。私ともう一人の存在なんかすっかり忘れちゃってるんだろうな・・・