いつもならこんなじゃれあいが、ドキドキしてワクワクして、楽しいはずなのに。


"もう、忘れよう"


と誓った自分の決意がふと蘇る。





足を止めた私に気づき、逃げるのをやめて掛け戻ってくる。


「どした?」



ホントに心配そうな顔して、私を見るな。

期待させるな。


「ごめん、調子悪いから先帰るわ。来週2倍やるから…」



「春田?」



戸惑う彼を残し、とぼとぼと家に帰った。



こんなんで本当に彼を忘れられるとは思えない。


どんどん手放したくなくなっていく気持ちも、友達以上になれないわだかまりも大きくなっていく。




「くそ…」



心が虚しい。



ばあちゃんも咲良も…一応克也もいてくれて、大好きなものもいっぱいあるのに。


十分なくらい幸せなはずなのに。




彼のそばにいられないってだけで、なんでこんなに寂しいんだろう?



なんで本当には幸せになれないんだろ?




沈む夕日が私の寂しさを映し出してるみたいで、その存在がすごく近く感じた。

朱が眩しすぎて、目頭が熱くなる。