「じゃあさ…




槙野が私の彼氏になってよ」






空気がみるみる凍っていくのを感じる。



あんたが温めてくれた私たちの間の空気も、溝も、私が一瞬で壊していく。





「…えっと」





「なーんてね」


私は笑った。

自分でも上出来の笑顔だったと思う。



その裏で自分を責め続けていた。



当たるなら当たって砕けてしまえばいいのに、臆病虫がまた姿を現して…



不完全燃焼してしまった惨めな私を。





「冗談だよ。真に受けんなよバーカ」



あっかんべーをキメて走り去る。

正直舌を出してからかった時にはもう、目から涙が溢れそうだったけど。



彼に背を向ける直前、一瞬見えた彼の表情は



安堵からか少しホッとしたような苦笑いだった。



「真に受けるかよ!じゃあな春田!」




これが私たちの関係。




それ以上にはなれなくて、それ以下にはなりたくなくて。