「なな何言ってんのよ!?その箒で払っても良いから!はやくー!」


しゃがみこんだ私から、槙野はどんどん距離をとっていってる気がする。



「やだよ…。こっちに飛んできたらどうすんだよ」



完全に逃げ腰の槙野の方へ、哀れな私に味方したのか強い風が吹いた。


「ひゃっ…」


首もとからなにかがはなれる感触。
風で蛾は飛ばされたらしい。




よ、よかった…



「うおおお、なんでこっちに飛んでくるんだよ」



不甲斐なくしゃがみこむ槙野。蛾は体育館の裏手にふらふら飛んでいった。



自分に踊らされた人間様を残して。




「はー…あほらし」



立ち上がって、掃除したのに散らかってしまった庭をもう一度掃きなおす。



槙野もそれに倣って立ち上がり、また目も合わせずに掃除を再開した。




せっかく仲直り出来そうだったのにな。




2人のため息は、風に流されていった。