「ほーら、由紀。お空にぐんと近づいただろう」


私の2倍程背の高かった父に肩車され、春の野原を2人で散歩する。


黄色い菜の花畑から足が離れ、真っ青な空に両手を伸ばす。



たくましい父の肩と私を支える手は、ごつごつ骨ばっていたけれどすごく安心する。



「パパすごーい。ゆき、パパのお嫁さんになりたい!」



ハハハと嬉しそうな大きな笑い声。

私にとって父はこの世界で最もかっこよくて、頼りになる存在。



母がいなくなってからも、男手ひとつで私を養ってくれていた。




あのころの思い出はいつまでもキラキラしていて、父よりも好きになる人なんて出来ないだろうと思っていたのだー





10年前の春。




あのころはまだ若かったのだ。




恋愛はそんな甘いもんじゃない。




理想とのギャップなんて言ってられない。




自分自身が信じられなくて、悩んでも仕方ないことを悶々と考え込んで。




仕方がない。




好きになったもんは仕方ない。





それがたとえ


どんなヘタレ野郎だとしても