「琥珀……?」



瞼を開くと、目の前に、千尋が立っていた。



彼の側の木には、麻痺で身体が動かなくなった月神が、幹に背中を預け、座っていた。



千尋は、心配そうに私の顔を覗き込む。



周りを見れば、いくつもの木がそびえ立っている。



ああ、そうか。



私は、脳内の世界にから帰ってきたんだ。



「千尋、私、どうなってた?」



「…?」



千尋にとって不思議な質問だったらしく、首を傾げながら答えた。



「さあ……? 琥珀は周りを風で覆われて、俺らから中が見えないようになってたから、わかんないや」



「そっか…。 ………ん?」



右手に何か違和感を感じる。



「琥珀……!それ……っ」



千尋は私の右手を見るなり、驚いて声を上げた。



私の右手にあったのは、桜美夜行から渡されたあの刀だった。