だけど、何故か、初めて来た気がしなかった。



心にもどこか落ち着きがある。



『……おいで』



「え…?」



どこからか、透き通るような声がした。



空耳…?



『…こっち』



まただ。



桜の木を見つめた。



花が光っている。



私は、吸い寄せられるように、桜の木に近づき、幹に手を当てた。



かすかにだけど、幹の中から音がしている。



よく耳をすましてみた。



―♪…♪……



「オルゴール……」



軽やかに奏でられるその音色は、どこか聞き覚えのある音色。



「この曲……」



間違いない。



これは、私が小さい頃、お母さんといつも聴いてたオルゴールの音だ。



とても懐かしい気持ちに駆られた。



でも、なんでここに……?