完全に押されている。



息が上がっている俺と、妖化の余裕そうな顔を見れば誰でも分かることだ。



あいつがここを去ってから、どれくらい経っただろうか。



袖で、額の汗を拭う。



……『琥珀!!』



俺に、怒鳴るように名前を呼ばれたときの、彼女の表情が目に焼き付いている。



辛そうな顔をしていた。



でも…あれでよかったんだ。



そう言い聞かせ、あとを追いたい気持ちを押さえ込む。



あいつの性格からして、おとなしく言うことを聞くことはなかっただろう。



ああでもしないとあいつは…



「……何をよそ見している」



「っ!!?」



いつの間にか妖化が接近していて、持っていた鎌を振り下ろす。



俺はそれをギリギリで避けた。



と、思いきや。



頬に、赤い線のようなものができる。