部屋を出る前、一瞬だけ颯の表情を確認した。



とても辛そうで、自分を責めているような表情だった。



……颯のせいじゃないよ。



大丈夫って言ったの、私だし。



颯、助けに来てくれたじゃん。



そんな顔しないでよ。



颯が来てくれたとき、すごく嬉しかったんだから。



助けを求めたらすぐ来てくれる貴方にドキドキしたんだから。



「……っ!?」



部屋まであと少しのところで、足を止めた。



「どうした?」



隣を歩いていたサクが、首を傾げる。



ドキドキした……?



胸に手のひらを当てる。



ドクン…ドクン……。



明らかにいつもより鼓動が速い。



もう息なんて上がってないのに。



ふと脳裏に浮かんだ、颯の顔。



いや、違う。



ドキドキしたのは誰であろうと助けに来てくれたから。



颯自身にではない。